妊娠中期から後期にかけて、貧血になる妊婦さんが増えます。パンダマもそうでした。
妊娠中は、血液量が増えて、ヘモグロビンが不足するため、いつも以上に鉄の摂取が必要になるわけです。
では実際に、どのくらい妊婦が鉄を摂らなければいけないのでしょうか?
妊娠中、1日に必要な鉄分の摂取量
厚生労働省が発表している資料によりますと、
■妊娠中期の鉄分必要付加量: 10.7 mg/日 推奨量: 12.9 mg/日
■妊娠末期の鉄分必要付加量: 14.6 mg/日 推奨量: 17.5 mg/日
※要因加算で求めた鉄の推定平均必要量・推奨量(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」 (2010年版より)
とあります。
で、そのまま鵜呑みにせずちょっと待ってくださいね。
パンダパが調査したところ、妊娠期の鉄分の必要量に関して多くのサイトに記載がありますが、読み取り方に注意が必要です。
というのは、単位が書いてなかったり(単位が間違っていたり)、数値がまばらだったり、必要といわれる数値に何倍もの開きがあったり・・・というウェブページが散見されたからです。
パンダパもパンダマも理系出身なので、単位や前提条件がいい加減な資料を見ると、かえって混乱します。
1日に必要な量なのか、妊娠期を通して必要な量なのか、必要「摂取量」なのか単に体が必要な量なのか、はっきりさせないと、まったく違う結論になってしまうので。
さらに、上記厚労省資料は、妊娠期の「付加量」ですので、「月経のない女性の推定平均必要量」に足す必要があります。
月経のない女性の推定平均必要量は、体重50kg、30歳で約6mg/日と考えてください。
鉄は吸収率が悪いが、足りないと吸収率が上がる
まず、妊娠して胎児に栄養を送るために血液量が増しますが、実際胎盤に送られるべき鉄の量というのは、妊娠中期で1日あたり3mg弱となっております。
ではなぜ、4倍もの鉄が必要になるのか? といいますと、鉄の吸収率が非常に悪いからです。
通常で15%程度しか、吸収されないと見られています。
ただし妊娠中期から後期にかけて、吸収率は上がっていると見られ、厚労省の上記試算では、25%を吸収率においています。
それでも妊娠中期で1日あたり約14mg、後期で20mg近い鉄が必要となると、現実的ではありません。
鉄20mgを、ほうれん草だけで摂取しようと思えば、1kg必要になります。
小松菜なら、700g必要。
いやいや、そんなに食べられるわけがない。
ポパイじゃあるまいし!
それでも有名なプレママサイトなんかを見ると、この数値を採用しているところがほとんどなのです。
しかし厚労省のブロック別講習会資料(2010年度版)によれば、
「いやいや、貧血になった人の割合からいって、実は妊娠中は40%くらいまで吸収率が上がっているんじゃないの?」
という仮定のもと(このあたり、割と適当ですよね)試算しなおしています。
その上で、付加量ではなく、実際に1日に摂取しなさいね、という目標がこちらです。
1日に必要な鉄の摂取目標
妊娠中期の必要量: 約12mg/日 推奨量: 14mg
妊娠末期の必要量: 約14mg/日 推奨量: 17mg
この数値でいえば、妊娠していない時より多め、末期で言えば30%~50%多く食べればよい、ということになります。
吸収率というのは、状況によってかなり変動するようです。
また、食品によっても違います。植物より、動物性の食物、豚レバーなどは吸収が良いことが知られています。
サプリメントなどでも、ヘム鉄!!!
として売られていますよね。
では吸収の良い動物性食品ばかりを食べていればOKかというと、そうでもないのです。
そもそも鉄が必要な理由は、血液量が増えた割に赤血球が不足するためですが、赤血球を作るには葉酸が必要になります。
葉酸は緑黄色野菜や果物に多く含まれますので、結局は野菜とお肉をバランスよく食べましょう、という話に落ち着きます。
それでも鉄も葉酸も、普段の生活の中で必要量を摂取することは、なかなか難しいですから、補助的にサプリメントを使うのも良いでしょう。